ビルト・アップ
弓の様な手首。
それぞれ2トンの破壊力を持つ2本の足。
鶏の様な素早い首の動きと、
その先に見えたものすべてを吸い込む強力な眼力。
100メートル先から僕と解るビビットな服。
20人位なら一発で黙らせられる大きな声と理論。

聞こえるノイズはすべて僕が発する。
壊れたものとはすべて僕が触ったもの。
見える可能性はすべて僕が考えたもの。

車に乗れば僕は、僕は4メートル×2メートルの原子核になる。
バイクに乗れば、長さ2メートルの電気ドリルをぶらさげた
バクテリアに変身する。
大気は僕を発熱させ、水が僕を動体に戻す。
apr.1996
ヨロイを着る
どんな所でも、自分が傷つかないようにヨロイを着る。
携帯電話と、吠える唇。
皮ジャンと皮パンツと、拳が馴染んだ手袋、
ゴアテックスの靴下、鉄板の入った靴。
満タンの4駆とハッシシとロレックスと
かさばらないジャックナイフと、mdウォークマンと
最近はモデムが付いたブックパソコン。
それに分厚い財布。

どんな時でも、自分が傷つかないようにヨロイを着る。
自動車電話と、端正な顔。
広い肩幅に合ったフルオーダーのスーツと、
夜でもサングラス、サテンの靴下と
サテンの黒いブリーフ。
フルサイズのメルセデスと
ボデコン秘書と屈強?な部下と
エグゼクティブ・シートと、
顔パスのクラブと
プラチナのアメックス。
ハエの様なマスコミと、最近は青山の事務所。
それに分厚い財布。

どんな場合でも、
自分が傷つかないようにヨロイを着る。
クラックbbsネットと、思慮深い眼。
黒いバンダナと口髭と長髪と、死人の様な体臭と
自家栽培のクサ。
セルフ・トランスポーテイションと神々と企業の裏情報と、
行ったことのある国の数と、サーバーマシン。
顔パスのコミューンとサブロー印のフリーチケット。
風俗と、最近出会ったグルの似顔絵。
それに分厚い財布。
apr.1996
評価
慰めも相談も、して欲しくないから僕を評価しろ。
説教するより評価しろ。
僕が造ったものを解らなくてもいいから評価しろ。
評価しろ。
あなたの家族なんてどうでもいいから評価しろ。
あなたの経歴なんて聞きたくもないから評価しろ。
僕が何処で生まれたなんて大きなお世話だ、評価しろ。
借金を踏み倒す僕を評価するな。
一番に笑い出す僕を評価しろ。
僕が生きていることを評価しろ。
雑誌を読む前に評価しろ。
歴史を振り返る前に評価しろ。
”鞭で叩かれるのが快感!”と、ほざく前に、
僕を評価しろ。
”海外でボーとするの・”よりまず評価しろ。
痛い最中でも評価しろ。
apr.1996
ひょっこりひょうたん島構想
波をヒョイヒョイ、ヒョイヒョイ乗り越えて。
船をグイグイ、グイグイ追い抜いて。
ひょうたん島は東へ行く、僕を乗せて東へ行く。
狭い地球の大陸棚に何かがきっと待っている。
嬉しいこともあるだろさ。
悔しいもあるだろさ。
だけど、僕は挫けない。
消されるのは嫌だ、笑っちゃおう。
進め、ひょっこりひょうたん島。
ひょっこりひょうたん
島。
mar.1996
tokyo未来派
移動するものに生命が宿る。
精神論より先に実態が存在してしまう。
スピードに酔っていてはいけない、スピードを掴むのだ。
胃袋が爆発する。ゴミが次々と再生される。
土地が揺れる。建材が鳴く。背広がはためく。
カオスを突き抜ける、それがtokyo未来派だ。
イメージがイメージの上に乗っかる。
フラッシュバックこそ、ほんのひと時の共通言語だ。
目の前の人の話に合わせる。数字で会話をする。
コピーのコピーを作る。本を百冊買う。
赤いハイヒールを追っかける。
生と死を一挙に認識する、それはtokyo未来派だ。
変化を遂げたといわれるモノでも、その実は連続体だ。
自らドライブすれば、スライドする時間差まで認識できる。
標識が立看板になる。
表札の裏には誰も居ない。
指人形は台所に出かける。
首の上には火の玉が乗っかっている。
今、抜いて行った運転手がバックミラーに映っている。
動力は何処から生まれる。
電子が飛び交い、軌道に乗る。
重力を意識せず、慣性に逆らって
垂直運動と水平運動に終始すれば、
スピードが生まれる。
求められる前にハンマーを叩き、
納品と同時にお金を貰い、
別れの前に立ち去る。
mar.1996
level
自分を忘れた者ほど、基準を欲しがる。
他人の判断で生きてきた者ほど、
階級を付けたがる。
せっせと金を継ぎ込んで、あれこれ時間を無駄にして、
やっと解った、他人のことが。
せっせと同じ顔に会い、あれこれ同じ文字を読み、
やっと解った、隣の人が。
”私は社会の仲間入りしたのだ。”
で、止まるワケ?
せっせと同じことをやり、あれこれ同じこと言い、
やっと解った、親がどいつか。
せっせと違うものを食べ、あれこれ違う場所で住み、
やっと解った、外国人を。
”我々は世界の仲間入りしたのだ。”
あれ、止まりましたね?
黄金の諺を持ち出されても、
止まった話など聞きたくない。

こっちを向かないなら、無視してやれ。

年老いた平等主義者が
オマエを捜している。
mar.1996
僕の影
punkerは飛び跳ねる。
影にいたわりをもって。
ランランランと動いている彼の影。それほど彼が嫌いなのか。
それとも、どこかに連れて行きたいのか。
それなら彼は何処に行けばよい?

いつも同じ所に居るのを、影はもどかしそうに蠢いている。
過ぎて行くろくでもない時間を彼の所為にする気はない。
彼が死んでも影は、彼の亡骸に話し掛ける。
”お前のせいで私は、ここから動けなくなった。
こんな所で終わりやがって!”
彼がこの地面から跳び上がる時だけ、彼の影は自由になれる。
彼が死ぬと、その自由さえも奪われてしまう。

punkerは飛び跳ねる。
それが、影を喜ばせる。
彼の影は変幻自在、パンにも鉄骨にも。
彼のリズム感がとても好きなのだ。
それとも、彼の鈍さに苛立っているのか。
真っ最中で彼は戸惑ってしまう。

都会でバイクに乗ることを、影は心からバカにする。
過ぎて行くろくでもない時間を彼の所為にする気はない。
影は、彼の撮ったヘタクソな写真をごみ箱に捨てる。
”なぜ、お前は彼女を撮る。
なぜ、私を撮らない。
私がここに居ることを後で、思い知らせてやる。”
その夜、影は、彼の左眼に酢酸をかけた。
”あんなに遠い病院に行くことはない。
私の上でゆっくり寝るが方がいい。
どんなお前だって、私はお前の側に居てあげる。”

一番にすることは、君が何処に居るかを探すこと。
jun.1997
古新聞古雑誌
古新聞、古雑誌等、捨てる用意できましたら
いつでもお声をおかけ下さい。
こちらから消しに参ります。
古新聞、古雑誌、ボロ切れも、忘れられないなら
お気軽にお声をおかけ下さい。
こちらから取りに伺います。
古新聞、古雑誌、ボロ切れ、ボロ屑など大好きだったものでも
こちらから、潰しに伺います。
縛りに伺います。
木端微塵にいたします。
お任せ下さい、黄色い花と交換いたします。
mar.1999
残す
撮ると消えてしまうことがある。
撮らないうちは、消えないと信じていることが、前進を妨げる。
本当に愛しいものを 消えることと知りながら、
だからこそ、
何かその記憶を残そうすることかもしれない。
愛するものが消える現実をまっすぐ見つめて、今を残そう。
今のすべてを染込ませよう。

それは、とても怖いけれど。

誰かを 誰も喜ばすことは出来ないかもしれないけれど。
後悔する時間をすべて写真に託そう。
nov.2001
生き物
楽しむために。
痩せ過ぎたカラダは、抱いて気持ちよくない。
骨盤が痛い。恥骨が痛い。
体臭が混ざり合って、嗅覚に感じたい。

太りすぎたカラダは、指で届くところが限られる。
体位が限られる。
体臭にもロマンスを忘れない。

いつまでも。
軟らかく、柔らかく。
解けて、溶けて。
すべてを労わり続ける。
nov.2002