ぼくの国、パパの国 99年・英 ★★☆
監督:ダミアン・オドネル
出演:オーム・プリー、リンダ・バセット、ジョーダン・ルートリッジ他
パパは誇り高きパキスタン人。7人の子供たちを立派なイスラム教徒に育てたいと願っている。ところが、子供たちはマンチェスター生まれの現代っ子!日常会話はもちろん英語だし、ベーコンだって普通に食べるし、女の子とデートもしたい!もう、パパの言うことなんかきくもんか!西と東のカルチャー・ギャップあり、親と子のジェネレーション・ギャップあり。この小さな家にぼっ発した独立戦争、果たしていったいどうなるの?

パパは子供たちに、パキスタン人として、イスラム教徒としての教育の押し付けるが、イギリス人の母親を持つ子供たちの感覚は、もうすっかりイギリス人。この一家のジェネレーションギャップと、隣人たちの悪意と善意を織り交ぜた、異国で暮らす家族の物語。

物語はちょっとスネた末っ子(いつもフード付きのオーバーで顔を包んでいて、『サウスパーク』の毎回死んじゃうケニーみたいで可愛い)の視点中心で語られる。パパを筆頭に、家族全員、顔とキャラの濃ゆいこと濃ゆいこと。子供たちは個性いっぱい。パキスタン女性との結婚を押付けられて家出し、ファッション業界に飛び込みゲイの恋人を持つ長男。家業のフライ屋(イギリスの定番おかず、フィッシュ&チップスかな?)を手伝っているものの、クラブ大好きのイケメン次男、工学部に行っていると偽って、実はパパ卒倒モノの前衛アーティスト志望の息子、親の手前サリーを着ているが、ふだんはタータンチェックのミニスカ制服の女子高生の娘、かたや敬虔なイスラム教徒の息子もいる。パパ(ハリウッド映画でも活躍のインド人俳優、オーム・プリー)は自分の信念を押しつけることが子供の幸せだと信じてうたがわない強烈なガンコ親父。いつも怒鳴り散らしている姿は『寺内貫太郎』。子供たちに名前入りの「アラビア文字入り時計」をうやうやしく贈るが、そんなのありがためいわく。パキスタン人の娘と無理やり結婚させられそうになった次男と三男は、ついにキレて実力行使!

この作品は家族内のジェネレーションギャップによるトラブルがモチーフだが、もうひとつ、「となりのヘンなパキスタン人」を見つめる隣人たちの、時には差別、時には友情の視線が織り込まれている。パキスタン人街を避け、あえてイギリス人が住む町に暮らす一家。親の世代は移民だから順応しづらいが、子供はイギリス生まれ。そのジェネレーションギャップと、人種のギャップを埋める役割を一身に担っているのが、イギリス人のママ。ママに対してもあれほど横暴に振舞うパパなのに、不思議なぐらい堪えている。パパによっぽど惚れていないとやっていけないよ。ラストにチラリと「自分はまちがっていたのかなあ」と初めて自分を振り返るパパ・傍らに、熱い紅茶を入れるママ。

この作品はネタが非常に良いので、料理しだいで、もっと面白く見せることができたのでは、と、ちと残念。家庭内独立戦争の中で起こるトラブルは、どこかドタバタした悪ふざけ感が目立つ。もうちょっと気の利いたジョークでも入れば良かったのにな(「おもしろくねえ・・・」というつぶやきを聞きました)。パパがこだわるパキスタンの風習も、もっと見たかった。


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