ハイ・フィデリティ |
00年・米★★☆ |
監督:スティーブン・フリアーズ
出演:ジョン・キューザック、イーベン・ヤイレ、ジャック・ブラック他 |
|
イギリスの作家、ニック・ホーンビィのベストセラー小説の映画化。原作に惚れこんだ主演のジョン・キューザックは、みずから製作・脚本・音楽に関わるほどの熱の入れよう。全編を流れる世界中のポップ・ミュージックは、音楽ファンならずとも楽しめる。監督は『グリフターズ
詐欺師たち』でキューザックを演出したスティーブン・フリアーズ。【ストーリー】音楽マニアを相手にする小さな中古レコードショップのオーナー、30男のロブは、ある日同棲していた恋人ローラに去られてしまう。これまでの「別れのトップ5」をリスト・アップし、「ローラなんか、ランクインさせてやらないぜ」とクールに振舞うが、ロブの心は空しいばかり。ロブは、自分の失恋の原因をさぐるために、過去の「歴代ガールフレンド」たちに会いに行く・・・。 |
音楽マニアの恋愛ベタ。店だけでなく、家にもうず高くあふれるレコードの山。レコード店のオーナーとして、マニアの客と、ちょっとクレイジーな音楽マニアの店員たちと過ごす日々は心地がいい。変化を恐れ、新しいものに踏み込むことができないタイプのロブを、ハンサムなんだけ どそこはかとないダサさが親しみやすいジョン・キューザックが、等身大に演じている快作。
失恋はツラいです。愛着していた相手に去られ、自分の至らなさを真正面から突きつけられる。人生でもっともシンドイことのひとつです。しかも、30台のなかばをむかえ、ベストパートナーと思っていた相手に突然去られることのツラさ、空しさといったら・・・。「なぜ彼女は去っていったんだろう」自問自答をしはじめることから、ロブの自分探しの物語ははじまる。
店に出ても店員のマニアックな音楽論にいらつき、何をやっても苦しみはつきまとい、もがくばかりのロブ。どうやら自分の失恋癖には、何らかの原因があるのかも知れない・・・。そう思ったロブは、過去につきあった彼女たちに次々と会いにいく。そのたびに、彼が思っていたことと違う事実を発見する。これがとてもリアルに身近に感じるエピソード。相手によって、尊大になったり、くつろげたり、不安だったりというそれぞれの恋模様を語る一人語りも良い。
初恋の相手は「"初恋の相手"と結婚して、オーストラリアで暮らしている」と知らされる。これはショック!自分こそが彼女の初恋の相手なのに、彼女の人生から完全に抹消されていたとは。次の彼女は、ロブと別れた直後に、次の彼氏とさっさと初体験をしてしまったツラい思い出が。しかし、事実は違った。「あなたが私のことを“カタイ”と言って去っていったの。その辛さの中で言い寄られた次の彼とは、ほとんどレイプ同然の初体験だったんだから」と・・・。大学時代の恋人チャーリーは、ロブにとっては背伸びの恋で、いつも不安がつきまとっていた(キャサリン・ゼタ・ジョーンズが、エキセントリックで奔放で手ごわい女ぶりを好演)。チャーリーと再会し、ホームパーティーに呼ばれるロブ。彼女は相変わらず輝いているかに見えたが、スノッブな仲間たちとの派手な会話の裏にある、中身のない彼女の姿を見抜いてしまう。
こうして失恋相手たちと会いながら、過去はやはり過ぎ去ったものだと感じ、本当に愛しているのはローラだという思いは強まるばかり。ローラを傷つけた自分の罪の意識も湧き上がってきて、ますますツラい。しかし、友人から伝え聞くには、ローラは自分に未練があるらしい!こんどはローラの新しい男(ティム・ロビンス←この役笑えるよ〜)との動向が気になってならない。男のアパートの下から何度も電話をかけたり、プチストーカー行為に及んでしまう。・・・・こうしてみっともない自分をさらけ、もがきながら、立ち直っていく過程がユーモラスに描かれている。
この作品はロブの失恋話がベースだが、ロブをとりまく音楽マニアの店員たちとのシニカルな会話のやりとりが最高!バリー役のジャック・ブラックは第二のベルーシ(『ブルース・ブラザース』のネ)と呼ばれる人で、コミカルな演技も抜群だが、ラストのライブシーンが絶品。シャイで心優しいディックもいい味出していて、まさに「脇を固め」ている。
原作小説は同名のベストセラー。すっごく面白いらしい。(買っちゃった)
|