キャスト・アウェイ |
00年・米 ★★★ |
監督:ロバート・ゼメキス
出演:トム・ハンクス、ヘレン・ハント、ニック・サーシー他
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『フォレスト・ガンプ/一期一会』の監督&主演コンビが放つヒューマン・スペクタクル。無人島に流され、そこでの生活を余儀なくされる男の悲惨な体験と生還、その後の人生の困難を描き、現代人の心の漂流を映し出す。【ストーリー】宅配便会社のエンジニア、チャックが乗った飛行機が海に墜落。九死に一生を得て無人島に漂着した彼は、恋人の面影を支えに生き抜いていく。そして4年の月日が流れ・・・。 |

「フェデックス」の貨物輸送用飛行機が太平洋で墜落し、主人公チャックが海に投げ出されるシーンは、『タイタニック』や『パーフェクト・ストーム』を思わせる迫力。とてつもなく広い南太平洋で、たったひとり大波に飲み込まれるシーンは、底無しの恐怖だ。
無人島での4年間にわたるサバイバル生活もよく描けている。飲み水を集め、魚を追いかけ、ヤシの実を割り(これがえらく難儀)、やっとのことで火をおこす。そして、孤独や絶望との厳しい闘い。「死」という逃避にも誘惑されることも。しかし、恋人ケリーとの再会を心の支えにして、チャックは生き抜くことを決意する。島に漂着したバレーボールに顔を描いて「ウィルソン」と名づけ(ウィルソン社製品だから)、孤独を癒す。この「ウィルソン」との奇妙な友情があまりにも切実で、私は一番泣けた。
無人島に流れ着いた時と、4年のサバイバル後のチャックの風貌を変えるために、1年の撮影ブランクを置き、その間にトム・ハンクスは25キロの減量をし(25キロってことはないと思う。せいぜい15キロぐらいの搾りだと思うけど)、髭も伸ばした。肉体的な変化ももちろんだが、トム・ハンクスの演技力はそれを上回る確かなもので、「ビジネスマン」と「野性化した人」を難なく演じ分ける。あの小さな目で、恐怖や孤独や絶望を写し、地獄めぐりをしたような生気を失った目もみせる。この作品でトム・ハンクスはゴールデン・グローブ賞に輝き、アカデミー賞にもノミネートされている。
この作品の優れた所は、4年後にチャックが生還した後に襲ってくる「本当の孤独」を描いたところだと思う。彼の生還はビッグニュース的に迎えられ、悲願かなってケリーに巡り合えるが・・・。
4年という空白の歳月の中で、すでにチャックは過去の人になってしまったのだ。彼はいわば「招かれざる客」で、どこにも居場所がないのである。
不思議だ。あれほど辛く孤独な無人島の暮らしの中では、恋人はいつも傍らに寄り沿い、ウィルソンという親友との語らいがあり、日々の仕事には創意工夫があったのだ。孤独ということの根本的な意味を考えさせられてしまう。こういう異物感を余韻に残すあたりが実に良い。
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