彼女を見ればわかること 99年・米 ★★☆
監督・脚本:ロドリゴ・ガルシア
出演:キャリスタ・フロックハート、キャメロン・ディアス、グレン・クローズ他
「百年の孤独」で知られるノーベル文学賞作家ガルシア・マルケス。その息子の脚本に惚れ込んだ、ハリウッドを代表する5人の女優が出演を快諾。『彼女を見ればわかること』はどこにでもある日常のなかでふいに直面してしまう痛みと孤独、そしてかけがえのない「他者」との出会いを丹念に描いた作品。彼女とは何か?そして、私たちはいったい彼女の何を知っていて、何を知らないのか?

『危険な情事』のグレン・クローズ、『ピアノ・レッスン』のホリー・ハンター、『アリー・マイ・ラブ』のキャリスタ・フロックハート、『チャーリーズ・エンジェル』のキャメロン・ディアス、『サイダー・ハウス・ルール』のキャシー・ベイカー・・・ハリウッドのトップ女優たちを集めちゃって、ギャラの総額は天文学的数字になるのでは?と思わず心配してしまった。まずはグレン・クローズに出演以来が来たらしい。するとクローズは、このノーベル賞作家ガルシア・マルケスの息子ロドリゴ・ガルシアの書いた脚本を読むやいなや、「ぜひ!」と快諾。クローズの出演を受けてか、このあとイモヅル式に「どの役でもいいからやらせてとフロックハートが言ってる」「キャメロン・ディアスが出たがっているらしい」と評判を呼び、女優たちはギャラの損得勘定ヌキで集まってきたという。それだけ、女優だったら演じてみたいと思う、女性の内面をデリケートに描いた作品である。

物語はロサンゼルス郊外に暮らす女性たちの人生に訪れた転機を、5つの物語形式で描いた群像劇。老母を介護する女医、不倫中の銀行の女性マネージャー、一人息子に情愛を注いできたシングルマザー、死の病に侵された恋人と暮らす占い師、盲目の妹を持つ刑事。いずれもが仕事上のキャリアを積み、男に頼らずに生きている。だけど、そんな彼女たちがふとしたきっかけで自分を見つめると、自分はとても孤独だということに気づいてしまう。

それぞれの物語が実にていねいに作られ、孤独におしつぶされそうな女たちの姿を、ガルシア監督はするどくもあたたかい視線で描いている。老母を介護する女医役のグレン・クローズ。『101』などの強烈なキャラが印象づいているが、占い師に彼女の弱さをとうとうと告げられるシーンの表情が素晴らしく良い。自分を責めている、生きることがヘタ・・・。仕事の成功をおさめ、しっかり生きてきたつもりの彼女だったが、自分でもうすうす感じていた「本当はとても弱い私」と初めて静かに向き合っていることを雄弁に語っているような、悲しくて優しい目である。

それぞれの物語の中に、別の物語の主人公がほんの少し重なりあうところが、オムニバス形式の映画にありがちなブツブツに途切れる印象をやわらげている。これは「街で何気なくすれ違うだけの女性たちにも、それぞれの人生があって、悩んだり泣いたりして、幸せを求めて生きているんだ」と思わせる効果があるんだか・・・。

脚本はキラッと光るところが多いけど、やや地味すぎるかな。ちょっと中ダレ感があるのは編集のせいかなあ。

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