マイ・スウィート・ガイズ |
99年・米 ★★☆ |
監督:ロン・シェルトン
出演:アントニオ・バンデラス、ウディ・ハレルソン他
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落ちぶれたプロボクサーで親友同志のシーザーとビンスのもとに、その日の晩のマイク・タイソン戦の前座試合のオファーが飛び込む。ボクサーとしての栄光と、オイシイ話に意気揚々として、シーザーの恋人グレースのクルマに乗り込み、ラスベガスへ出発する。 |
『マイ・スウィート・ガイズ』に登場する、かなりトウの立った(バンデラスもハレルソンも撮影当時は38歳ぐらい)プロボクサーのシー ザーとビンスは、かつて栄光の寸前で夢破れ、うだつの上がらない日々を送っている。突然の対戦試合のオファーは彼らにとって再起をかけたビッグ・チャンス。ビンボーな二人はシーザーの恋人グレース(ビンスの元恋人でもある)の車に乗って、いざ一路ラスベガスへ。
このシーザー(バンデラス)とビンス(ハレルソン)が実に魅力いっぱいに描かれている。シーザーはグレースに突然の破局宣言をされたとたんに、泣き出すし(可愛いい!)、ビンスは敬虔なカソリックだが、ちょっとキレ気味。どちらもアタマがシンプルで、試合に負けた相手の気持ちが知りたいと、1年間ホモになったり、競ってワッフルを食べたり、やることが可笑しい。
ロサンゼルスからラスベガスまでの道のりを、忠実にたどったあたりも実にいい。みごとなまでに何もない砂漠の道中、クルマという個室の中では、おのずと会話の中で登場人物の人生観や恋や野望が素直にむき出しにされていくものだ。相手はしかも、親友同志とはいえ、数時間後には壮絶な闘いをする相手なのだ。この「親友だけど敵」という関係が実に男っぽく、一触即発の緊張感がありながら、お互いを好きだという気持ちがあふれている。
その二人の間を恋人として渡り歩いたグレースが、すごい女っぷりである。それぞれの男を仲たがいさせることなく、相手に勝つ自身をつけさせる。小手先の色気で男をまどわし「手玉にとる」という安っぽさがなく、本当の意味で男を立てる「いい女」像を作り上げている。しかもパワフルで自分の人生を生きている。シーザーとビンス「俺らにはこんないい女、釣り合わないや」とあっさり「引き分け」。かっこいいっ!
おっと、もちろんシーザーとビンスの対戦シーンもたっぷり。
とにかく、オトナになりきれないままトシだけとった男を、バンデラスとハレルソンが実に味わい深く、まさに「スウィート」に演じていて、とっても気持ちいい作品だ。やや地味な作品なので、日本で公開するかしないかのギリギリラインだったと思うが、このボーダーラインの作品にこそ秀作がいっぱいあるので、応援していきたい。
アントニオ、こういうシンプルな男を、野暮ったさと甘さを絶妙なさじかげんで演じるのが本当にうまい。スペイン語で愚痴をわめくシーンがあるけど、やっぱりアントニオの野太い声で放つスペイン語はしびれます。
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