ショコラ 00・米★★★
監督:ラッセ・ハルストレム
出演:ジュリエット・ビノシュ、ジョニーデップ、ジュディ・デンチ他
『サイダー・ハウス・ルール』『ギリバート・グレイプ』のラッセ・ハルストレム監督作品。2001年アカデミー賞作品賞ほか多数ノミネート【ストーリー】50年代のフランス。宗教的指導のもと、因習にとらわれた閉鎖的な村に、ある冬の日、ヴィアンヌとアヌーク母子がやってきて、チョコレート・ショップを開く。ヴィアンヌのチョコレートの魅惑的な味わいは、村人たちの秘めていた欲望を刺激し、豊かな人間性を解放していく。

私がダイエットをするたびに、最後まで諦めきれないものの一つがチョコレート。あの、ココアバターの口どけと、カカオの芳醇な香りの誘惑といったら、これはもう抗いがたいですよ。日ごろのちょっとしたストレスを、たったひとつぶのチョコレートが解き放ってくれることだってある。チョコレートって何だか素敵な食べ物だと思いませんか。

『ショコラ』でヴィアンヌが作る魅惑的なチョコレートは、異国と異教の香りがする。ヴィアンヌのチョコレートの魔術的な力は、古代メキシコで「神からの贈り物」として、王朝で重んじられていたという歴史に繋がっている。北風とともに、赤いマントをかぶってアンダルシアからやってきたヴィアンヌとアヌーク母子は、まるで流れ者の異国の魔法使いのよう。
ヨーロッパはどの町にも中心に教会があり、教会とキリスト教が人々の生活の中心に据えられていたが、『ショコラ』の村はえらく窮屈。村長は、かつて異教徒を迫害して村を守った伯爵の子孫というプライドがあるために、宗教的指導のもとで村人を厳しく統制。村は一見秩序正しく平和であるが、町も村人も死んだように静かである。そんな中、断食の最中に楽しげなチョコレート・ショップを開いたヴィアンヌ。流れ者で父親のいない娘を持つヴィアンヌを、伯爵は「ふしだらな無神論者」として敵意を持つ。一方、おそるおそるヴィアンヌに近づいた村人は、チョコレートを口にしたとたん、押し殺していた欲望や、人間としての豊かな気持ちが、パアア~っと解放されていく。マンネリの中年夫婦には媚薬的スパイス入りのチョコレート。生きる希望を失った老人にはチリペッパー入りのホットチョコレーというふうに。欲望というのは、おもむくままに満たしていたら悪を生むこともあるが、人間が生きる原動力であることは確か。欲望をうまく操縦しつつ、楽しく生きることが人生の醍醐味でないの。それを信仰を盾にして、頭ごなしに否定するのはいただけない。村人を縛りから解放し、人間の弱さを責めることなく受け入れる。ヴィアンヌが貫いた「寛容」な姿勢が、小さな村の「宗教対チョコレート」戦争を大きな調和へと導き、ヴィアンヌの放浪の旅も終わる。ファンタスティック!

古い宗教観を、時代にあわせてイノベーションしていくことの必要性は、同じくハレストレム監督の『サイダー・ハウス・ルール』の中で、「堕胎の是非」として描かれている。ハルストレム監督の作品は、キリスト教への提案的なものが感じられるんだなあ。・・・・という見方もできるが、『ショコラ』は楽しくて美味しいおとぎ話です。


【ぱんにゃのみーはーくらぶ】

「ジュリエット・ビノシュはフランスの大竹しのぶだ!」って友達が言ったのが、妙にツボ。きゃしゃかと思いきや案外むっちり体型で、ジョニー・デップがビノシュを川で助けるシーンには、「えらい重そうだな~」と心配した。娘役のヴィクトワール・テヴィソル、大きくなったけど、顔は『ポネット』のまんま、ずっと半泣き。英語のセリフは「音で覚えた」感じではなさそう。4歳のころからプロ根性があったもんね!それにしてもジョニー・デップ、いいわあ~。眼がね、あの暗い眼が漂泊者ぽくていい。デップのギター弾きシーンはナマですよ。ギタリスト出身だから!


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