6/11(金)フュッセン(シュヴァンガウ、オーバアマガウ)
ノイシュバンシュタイン城と美味しいソーセージ
トンテンカントンテンカンと釘を打つ音で目覚める。窓を開くと、隣の民家の屋根の上でまじめに働く一人の大工さん。その傍らには「ひと休みにはこのビールを飲むんだもんね」と、ちょこんと置かれたビール瓶。
ちょっと曇り空。今日はルートヴィヒ王のお城見学。「HECHTENの朝食はとても豪華」といううわさどおり、ブッフェ式の食卓は、KIRIのクリームチーズ(大好物)に色んな種類のハム、ヨーグルト、バターケーキ・・・。ゼンメルは美味しくてオレンジジュースもとても新鮮。
フュッセン駅前で傘を買う。赤い折り畳み式。「ジャンプ傘」というところが機能性重視のマジメなドイツぽくて何だかほほ笑ましい。バスに乗ってノイシュバンシュタイン城のふもとへ。このふもとの村は、商店ひとつない緑が豊かな土地である。ここからお城までは徒歩か馬車。うっそうと茂る森の山道をかなり歩く。途中ちゃぐちゃぐ馬コに追い抜かれながら、小雨の中を行く。しだいに目の前に大きく迫るお城は霧がかかって何だか不気味な赴き。
ノイシュバンシュタイン城は、バイエルンの国王ルートヴィヒU世が、17年の歳月と巨額の費用をつぎこんで作った中世の童話のようなお城。その美しさはロマンチック街道の観光ハイライトとして名高い。ルートヴィヒはワーグナーに心酔し、耽美的芸術を愛してやまなかった。生涯独身を通し、彼だけの芸術世界に浸るためのお城をいくつも作った。しかし、貴族らの陰謀にはまり、精神異常者ということで幽閉されて謎の死を遂げた不幸な王様。ルキノ・ヴィスコンティの『ルートヴィヒ
神々の黄昏』はそんな孤独な王の狂気の生涯を描いた傑作映画。城の敷地に人工洞窟を作り、その中の泉に小舟を浮かべ白鳥に引かせていたシーンには驚いた。
お城の入場は言語別に別れたツアー方式で、嬉しいことに日本語ガイドツアーもある。日本組は何組もの団体さんで長蛇の列。「あんた一人ならここに入っちゃいなヨ」と親切に割り込みさせてくださった団体さんとごいっしょさせてもらうことにする。
さすがに豪華である。寝室には天蓋つきの凝りに凝った彫刻がほどこされたオーク材のベッド。壁いちめんに描かれた劇画調のオペラのシーン。オペラ鑑賞のための豪華な「歌手の間」もある。そのどれもがものすごく凝っていて、徹底したマニアぶり。よーし、ちょっとここからは遠くて不便だけど、人工洞窟があるリンダーホーフ城に行くぞ!
フュッセンにいったん戻り、昼食。何か美味しいものが食べたいなーと鼻を利かせると、お肉&ハム・ソーセージ屋さんが、お惣菜も売っていて、お客はめいめいにスタンドでパクついていて何だかおいしそう。ドイツ定番の大きなソーセージと、つけあわせにザワークラウト(千切りキャベツを醗酵調理させたもの)を頼む。ゼンメルも1コついてくる。マスタードも添えてもらっていただきまーす!これで500円くらいかな。もうね、ソーセージは目の前の鉄板でジュージューのあつあつの焼き立てで、ぷつんと噛むと肉汁がジュワー。ザワークラウトもいい感じに醗酵していて、こってりしたソーセージの付け合わせに最高。量もたっぷりで大満足。日本で無事を祈ってくれているソーセージ大好き娘Q子に食べさせてあげたいなーと心から思った。
リンダーホーフ城へショートトリップ
ルートヴィヒの城のひとつ、リンダーホーフ城があるオーバアマガウという町までは、ローカルバスで1時間30分ほど。小さな村が点在するのどかな山道や湖沿いの木立の中を走る。途中下校途中の小学生たちがワイワイと乗ってくる。小さな女の子が、ちゃんと「隣に座っていいですか?」と聞いてくる。「ヤー、ビッテ(どうぞ♪)」
金髪のドイツ人の子供たちはとても可愛らしい。何を表しているんだかよくわからない工作を持ち帰っている。「お客さんにぶつけないようにね」と優しく注意する運転手。ふと、窓の下にチョコレートメーカー「ミルカ」の営業用の軽自動車が通る。紫のペイントにウシの模様が可愛らしい。それを見つけた子供たちは一斉に「キャ〜!ミルカ〜!!」と大騒ぎして手を振る。みんなが大好きなチョコレートの車は、手を振ってパパッとクラクションを鳴らして応える。私はこの瞬間からミルカチョコレートが大好きになり、今でも時々思い出してはうす紫色の包み紙のミルクチョコレートを食べている。
途中休憩があり、アメリカ人一家と話をする。「どこへ行っても日本人のツアーがいっぱいでびっくりしたよ。君は女の子一人でえらいね」とお父さんに誉められる(私は童顔なので、このようにしょちゅう「一人でえらいね」と構ってもらえる)。日本に行ったことがあるというご夫婦は、日本の話を聞きたい様子だったが、私が英語が不自由なのでかなわなかった。それでも一生懸命にゆっくりと言い方を変えながら、わかるように話しかけてくれた。子供たちも可愛くて、とても優しい人たちだった。アメリカも行ってみたい。英語を絶対に勉強しよう!
オーバアマガウ駅に到着。す・すごいローカル駅なので不安になる。駅前にはぽつんと小さなガソリンスタンドを兼ねた商店があるだけ。ここからリンダーホーフ城へ行くバスに乗りかえるのだが、トイレに行ったり、駅の裏でにわとりを見ているうちにバスが行ってしまった(アホや)。次のバスは1時間後。大失敗。フュッセン行きの帰りの最終のバスの時間に間に合うように計算すると、リンダーホーフ城見学の時間は1時間しかない。それにしてもオーバアマガウの駅員のキビキビした対応。こんな田舎駅なのに「仕事キッチリ♪」である。時刻表もささっとコピーしてくれ、しかもフレンドリーだ。こういうことで旅の印象が良くなるものだ。駅前には何もないので家に電話する。
バスに乗ってお城へ。リンダーホーフ城は敷地が広く、まずはとにかく人工洞窟を見たいので走る。時間がないっ。ここは数名ずつしか入れないのだ。少しだけ待って中に入る。ほんのり暗い洞窟は怪しくライトアップされている。人工の泉にはロマンチックな小舟がひとつ浮かんでいる。この小舟に揺られていたら、空想の世界を旅することができそう。何だか孤独な王様の幸せな時間が横たわっているようだ(写真は暗くて写らなかった)。王様は当時このような贅沢で国費を使い果たし、非難を浴びたが、今はバイエルン地方の最大の観光収入源として土地を潤しているという。
絢爛豪華なロココ様式の宮殿も見たいのに、残念なことにバスの時間が来てしまう。城の入り口のバス乗り場めざして林の中を足早に急ぐ。ふと、地面にコロコロと黒いゴムのかたまりのようなものがたくさん落ちているのに気付き、何だろうと、ついじっと見てしまう。それは真っ黒でネラネラと光り、イボがいっぱいついた巨大ナメクジであった。顔の血の気がサーッと引いた。思わず「ひいいいい〜!」と情けない悲鳴を上げて、追いかけられているわけでもないのに一目散に走って逃げる。途中かなりの数のナメクジをブチュブチュと踏み潰す。ものすごいスピードで駆け抜けたので、バスの時間にはたっぷり間に合い、アイスクリームをいただきましたの。
バスの車窓からは、いちめんの花畑。これこそ見たかったバイエルンの景色だ。リンダーホーフの宮殿も見たかったし、もう一つのルートヴィヒ王の城ヘレンキームゼー城も見たい。ここはベルサイユ宮殿をまねて建造されたお城で、「鏡の間」はベルサイユ宮殿よりも広いという、豪華で贅を尽くしたお城だそうだ。いつかまた、必ずバイエルンを訪れようと決意する。ドイツが大好きなうちのツレアイを連れてきてあげよう。
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