5/24(月)マドリッド→グラナダ
ゆかいなAVEの乗客

今日の予定。9:30の新幹線「AVE」に乗って、ボバディーリャに12:55着。そこで14:30の列車に乗り換えて16:30グラナダ着と。アンダルシア地方への移動日であります。AVEの予約は昨日やっておいた。
ヤマちゃんとホテルの朝食を。食堂横に1900年代初頭風のサロンがあったりして、二つ星ながら何だか奥が深いホテルである。27日にバルセロナからミラノに向かうつもりでいたが、トーマス・クック時刻表に書かれている便がない。で、28日の列車にする。こういう予定組をテキパキこなすヤマちゃんを尊敬の目で見つめる。もう一泊メディオディアでゆっくりすると言うので、ついでに私がアンダルシア旅行から帰った時のシングル部屋を取ってもらうことにする。あ、まずい。どうも頼ってしまう。
AVEの一等車輌には、イギリス人家族や、アメリカのフロリダに住む老夫婦、スペイン人ビジネスマンなどが、アンダルシア地方のマラガやコルドバをめざす。マラガと言えばセクシー俳優アントニオ・バンデラスの生地である。私はスペイン時代のバン様が好きで、美しくてどこか品のない男っぷりにクラクラしたもんです。ハリウッド進出後、絶倫メラニー・グリフィスと結婚してからは、彼の魅力の全てをメラニーに吸い取られてしまったようだ(一方メラニーは妙にツヤツヤしている)。それはどうでもいい。
AVEの車輌にキュートな男性ウェイターがワゴンをガラガラ押してやってきて、前の座席から「お飲み物はいかがですか?」と尋ねる。AVEのファースト・クラスは飲み物や軽食の無料サービスが受けられるのです。しかし、イギリス人家族やフロリダ老夫婦は「ノーサンキュー!」ときっぱり断る。やがて、それぞれの乗客は席を立ちカフェテリアのコーヒーを買いに行った。「皆さん、ワゴンの飲み物は嫌いなのかな?」と思いながら、なみなみとついでもらったオレンジ・ジュースを飲む私。ほどなくしてさっきのウェイターが食事のワゴンを押して入ってくる。そして「テーブルをお出し下さい。お食事のお飲み物はいかがしましょう」と最前列のフロリダの老夫婦に尋ねる。するとフロリダ老夫婦、「だから、いりませんて!」と怒った。ウェイターは一瞬ひるんだが、「あのう・・・、タダなんですよ」と言った。彼らのやりとりをじっと見守っていた周りのあちこちから急にどよめきが・・・。「タダなんだ・・・」「タダだって」「タダなのか」・・・あちこちから「Free」という単語まじりの感嘆の声が起こる。「ここはファースト・クラスですから。あ、コーヒーもカフェテリアのを買われたんですね。いくらでもお持ちしますのに・・・」とウェイター。それを聞いたフロリダ老夫婦はさもおかしそうに大笑いした。私も通路をへだてた隣席のビジネスマンと目が合い、お互い同時に吹き出してしまった。「キミィ!笑っちゃ悪いよ」と私に言いながら、ビジネスマン氏は身体をよじってヒイヒイ笑った。車輌は一気になごやかなムードに包まれ、白ワインを少し飲んだ私はとても楽しい気分になって、食後イギリス人やフロリダ老夫婦とおしゃべりをする。フロリダはとてもいい所で、フロリダ・キーズの中の素敵な島に住んでいると聞く。イギリス人が連れている小さな女の子がとても可愛く、今はシンデレラにハマっているという。女の子は持参のポテト・チップスを全乗客に配っていた。窓の外には抜けるように青い空。そしていちめんに広がる満開のひまわり畑。フランスののどかな田園風景とはまるで違う、男性的でどこか悲しい景色だった。AVEの一等は映画が上映される。『ローマの休日』だ。吹替えでスペイン語をまくしたてるアン王女だが、イタリアに行くのがとても楽しみになった。アンダルシア地方に近づくにつれ、家並みがぐっと変わってくる。白壁の可愛い家屋がてんてんと建つ。なんだか素敵な所だ。

グラナダに着きはしたけれど
グラナダはアルハンブラ宮殿を持つ観光名所なのに、鉄道で行くのは超不便である。ボバディーリャで乗り換えで2時間待ち、さらにローカル線で2時間。沿線のコルドバ−グラナダ間は列車では5時間かかるが、バスなら2時間ちょっとで着く。バカだったなあと思いながらも、駅前にぽつんとコカコーラの看板のある商店があるだけの、あきれるほどに何もないボバディーリャの駅は気に入った。商店でミネラル・ウォーターを買うが、これが見事なほどに英語が通じない。『6カ国語会話集』が役に立ちそうだ。「旅行者にとってアンダルシア地方は西ヨーロッパの中では難易度の高い場所だよ」と言うヤマちゃんの言葉を思い出す。しかし、その後起こる苦難困難をその時の私は知るよしもなかった。
グラナダ到着。アンダルシア地方の素朴な風景とイスラムの名残のミステリアスなムードをグラナダに期待していた私。それは旅行者の勝手な思い込みのようだ。街は栄えているがゴミゴミしてどこかスレた印象。スペインというよりは中南米という感じ?今夜の宿はユースにしようと、歩く。しかし、満室!ああ、どうしようと思いながら歩き出すがユースに宿泊している白人のアホそーな学生たちに「やーい」とからかわれ、思いっきりムカつく。でもバカが移るから相手にしないもんね。そんなことより今夜の宿だ。旅慣れている人は駅などの観光案内(ツーリスト・インフォメーション)で宿を紹介してもらうが、私にはインフォメーションでエイゴで交渉するなんてとんでもない高度なワザだと思っていた。で、安宿が集まっているというアルハンブラ宮殿近くまで行くことにする。そこまでは徒歩ではけっこうあるのに、距離感がつかめず歩き続ける。途中ガラの悪そーな男に「ウ〜ノ(ひとり〜)?」と声をかけられ無視する。感じ悪いなあこの街。重いコロをひきずりながら歩く。疲れてきた。迷ったりしながら1時間ほど歩き続け、ようやく『地球の歩き方』に載ってる安宿「ブリッツ」を見つける。とても感じのいい女主人は英語が話せる。「まず部屋を見てみる?」と言ってくれているのに、一瞬何言ってるのかわからず「えっ?」という顔をしていたら、「へ・や・を・み・ま・す・かー?」と2階と目を指差してゼスチャーしてくれた。シングルの部屋はベッドと小さなテーブルと水道があるだけだけど、清潔で感じがいい。料金も日本円で2300円くらい。そうよ、スペインは宿代が安いから、ユースを利用することないんだ。荷物を置いて近くのお土産屋さんでグラナダ風絵皿をみつける。アンダルシア地方はインテリアにプレートを飾っている。友達のさっちゃんもプレートが欲しいって言ってたな。これをお土産にしようとたくさん買う。かなりの重さになるので明日郵便局から航空便で自宅に送ることにする。部屋に戻り、共同シャワーをあび、流しでゴシゴシ洗濯をする。窓を開けると、通りを挟んだたくさんの安宿。近くの広場から聞こえる楽しそうな笑い声や歌声が、夕闇に響いている。何だかとても寂しくなる。ちょっぴり暗い気持をひきずって眠る。

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