6/5(土)ヴェネツィア→
今日もお天気 観光日和運河の小路
ミネルバをチェックアウトし、サンタ・ルチア駅へ。荷物をコイン・ロッカーに預け、今夜のウィーン行きの夜行列車のクシェットを予約する。昨日の段階ではクシェットが満席だったので、座席で夜明かしするかもなーと思っていたら、キャンセルが出たのか、うまい具合にクシェットが取れた。ひと安心してヴェネツィア観光へ。今日もいいお天気だ。
まずはヴェネツィアン・グラスで有名な島、ムラーノ島へ行こう。しかし、ヴァポレット(水上バス)を何度も乗り間違えてしまい、観光地から外れた工場地帯なども廻ってしまう。でもそれはそれで楽しかったりする。ヴェネツィアではヴァポレットに乗ってのんびり景色を眺めるだけで、とても楽しいのだ。

静かなムラーノ島でヴェネツィアン・グラス屋さん
ムラーノ島ではガラス博物館でヴェネツィアン・グラスの美しさを堪能するつもりだったが、残念ながら10月まで改装のために閉館していた。ムラーノ島は案外ひっそりしている。運河沿いをてくてく歩きながら、猫に声をかけたりグラス屋を覗いたりする。古い映画『旅情』で、キャサリン・ヘプバーン演じるアメリカから来た孤独なハイ・ミスが骨董屋の主人と恋に落ちるのだが、その骨董屋にあるヴェネツィアン・グラスがとても美しかった。真紅のワイングラスである。ああいうのもいいよねーと思いながらショーウィンドウを見て廻るが、店によって工房によってデザインが違うようで、中にはアヴァンギャルドなデザインの作品などがあり、掘り出し物がたくさん見つかりそう。よく見かけるのは、金太郎アメのよう模様の入った細いガラスをビーズ状に切って並べて、焼いたアクセサリー。腕時計で文字盤の周りにガラスが施されているものが素敵だった。でも、時計じたいがちょっとチャチである。もっと時計がしっかりしたムラーノ島のにゃんこものだったらいいのにな。レストランのツーリストメニューの昼食をとることにする。気のよさそうなおじさんが「今日はシーフードがオススメだよ」というので、あさりのスパゲティとイカのリング揚げを食べる。あっさりした塩味とオリーブオイルの味が美味しかった。イタリアのサラダはドレッシングがかかっているのではなく、食べる直前に塩・胡椒・ワインビネガー・オリーブオイルを好みでかける。このスタイルは気に入った。むむ、フィレンツェやミラノでは食事は外れが多かったが、ヴェネツィアでは連勝だな。

のんびりのんびりサン・マルコ広場のハトおじ
ベネツィア観光のメイン、サン・マルコ広場へ。ここは鳩がやたら多いと誰もが言う。ロンドンのトラファルガー広場もすさまじかったが、ここもおびただしい数の鳩がいる。インド系の家族がハト使いのように頭や肩に乗せて遊んでいる。
サン・マルコ寺院にドゥカーレ宮殿とめぐって、広場を眺めながらお茶を飲む。一人旅のいいところは、こうやって好きな時に好きなだけぼんやりと座っていることができること。階段などに座り込んでぼんやり過ごすのも好きだ。アカデミア美術館はイタリア美術の傑作がたくさん展示されているが、旅の疲れが溜まってきている。今日は
水辺でぼんやりしたり、ヴァポレットに乗って過ごそう。ヴェネツィアン・レースを探しに行くが、今はそのほとんどが中国製らしい。だからというわけではないが、気に入るものは見つからなかった。

楽しいクシェットサン・マルコ寺院
夜行のクシェットに乗る。今夜のメンバーは中国人夫婦とオーストリア人ビジネスマン。ウィーンに住みシーメンス社にお勤めのウォルター・ミケス氏は自分以外全員東洋人なのが嬉しいらしく、熱烈歓迎で色々と話し掛けてくる。中国人夫婦は英語が苦手なので(中国は英語教育をしないから)、私と夫婦が漢文で筆談し、私がいいかげんな英語でミケス氏に通訳した。筆談を見ていた見たミケス氏は漢字がいたく気に入ったようで、「私の名前を漢字で書けないものか」と言う。で、夫婦と協力して「魚留多 美恵須」と書き上げ「魚が沢山住むような、美しく恵み多い場所という意味だ」とかなんとか適当に説明したらミケス氏は大感激。「じゃあ息子にもぜひ書いて欲しい!」という。名前を聞くと「シュテファン」だとゴンドラも乗りたかったないう。しゅてふぁ〜ん!?難しいなあ〜。これには悩んだ。しかし、誇り高い漢字文化を持つ我々は、日中の知恵を結集して「朱帝扇」とでっちあげた。扇=ファンということで・・・。「これはどういう意味だ」とミケス氏が聞くので適当に「レッドキングの扇だ。これは徳のある皇帝の証だ」と嘘をこいた。
眠るにはまだ早いので、みんなでミネラル・ウォーターで乾杯しておしゃべりをして過ごす。ミケス氏はヴェネツィアが大好きで、時々スケッチ・ブックを持って訪れるらしい。「絵を見せて下さいよ」と言ったら喜んで見せてくれた。水辺に浮かぶ塔を描いたもので、上手くはないけど、ヴェネツィアが大好き!という気持ちがリアルト橋あふれていた。中国人夫婦の旦那さんは北京に住む絵描きさんだった。「作品が見たいな〜」とミケス氏と私が言うと、「ちゃんとありますよ〜」と、旦那さんが描いたポスターを映した写真を見せてくれた。これがスゴイ。真っ赤な背景に人民服を着た劇画調の男女が、ななめ天空に向かって「ビシッ」と指を差している、コテコテな共産党仕様なのだ。ミケス氏と私は「ク・ク〜ル(かっちょいい〜)・・・」と言った。中国人夫婦はとても優しくて、ゼスチャーをまじえたジョークも上手な楽しい人たちだった。みんなして言葉が不自由なので、言ってることがわからなくなると「ま、とりあえずカンパ〜イ」を繰り返し、そのたびにゲラゲラ笑った。コミュニケーションは言葉ではなく、心だということを、強く感じた楽しい夜だった。


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