6/6(日)→ウィーン
ウィーンに到着
シュテファン寺院
目覚めたらそこはオーストリア。ばたばたと支度をし、楽しく過ごしたクシェットのメンバーと名刺交換をして別れる。
ウィーン南駅に到着。今日は日曜日だからなのか、駅はシーンと静まり返っている。イタリアよりもひんやりした空気と、ドイツ語圏特有の清潔な印象を受ける。駅のアナウンスはお堅い感じのドイツ語。ラテンの国を廻り、昨日まで歌のように流れるイタリア語の中にいたのが、陸続きの国境を越えただけでまったく言語が変わるのが不思議に感じる。「アー」だの「ウヴェー」だの「グェー」だの、ドイツ語っていちいち語感がおかしい。駅でとりあえずシリングに両替する。イタリアの両替所では若い女の子がタルそーに、「私もうすぐアガりなんだけどなー」と言いたげに、時計をチラチラ気にしながらモタモタ働いていたが、ウィーン南駅の両替所では髪をピシッと撫で付けた金髪のでっぷりしたおじさんがキビキビと働いている。
まずは宿を確保しよう。ウィーンでは音楽鑑賞もしたいし、『第三の男』の観覧車があるプラター遊園地に、シェーンブルン宮殿に、クリムトの絵に・・・行きたいところが沢山あるので、2泊することに。フィレンツェのユースホステルで話をした日本人の一人旅の男性に「これからウィーンに入るんだったら、南駅からトラム(路面電車)にちょこっと乗ってスグの『BOSH』という宿が最高に快適で絶対おすすめですよ!」と熱く語っていたので、泊まることを楽しみにしていた。南駅のインフォメーションに入る。優しそうな中年女性がニコニコと迎えてくれる。「ペンションボッシュを勧められたので、泊まりたいのですが」と言うと、すぐに調べて電話予約してくれた。地図を広げて「行き方は、ええと、駅前からトラムに乗るの」「・・・トラム」「そしてO(オー)番線に乗るの」「・・・オゥ!」・・・・ただ復唱したつもりなのに、「Oh!」と感嘆になってしまい、インフォの女性がブーッと吹き出してしまった。売店で袋入りのリンゴのグミを買う。
駅前から2両続きのトラムに乗る。路面電車がある街長崎で過ごしたことがある私は、とても懐かしい気持ちになる。ふた駅ほどして降り、歩いて3分ほどで小さな看板があるBOSHに到着。静かな住宅街の古いマンションのような建物のワンフロアを宿にしている、ヨーロッパによくあるスタイルの宿だ。朝なのでチェック・インはできないかと思いきや、部屋に入ることができた。愛想のいいおかみさんに、部屋と玄関のカギを渡される。いつでも自由に出入りしていいのだ。これは気楽だ。板張りの部屋の中にはすりガラスで仕切られた小さなシャワールームと、流しとベッドと机とテレビがあるのだが、隅々までさっぱりと掃除が行き届いていて、シーツもパリッと清潔で、ふんわりと洗剤のいいにおいがする。トイレは廊下なのだが、これまた顔を洗いたくなるぐらいピカピカに磨き上げてある。廊下では太ったおばさんが忙しそうに部屋の掃除をしている。モップが置かれているのかと思ったら大きな灰色のムク犬が。「グリュスゴット(こんにちは)」と挨拶する。部屋のシャワーは熱いお湯がたっぷり出て、気持ちいい(こういうことに感激するんですよ。ユースやボロ宿を廻っていると)。宿の周りはとても静かで、とても居心地のいい宿だ。名もない日本の旅人よ、ありがとう(名前はあるんだろうが)。

ウィーンのおいしいものザッハー・トルテ 食べかけでごめんなさい
トラムと地下鉄を乗り継いで、シュテファン寺院の塔をランドマークとするウィーンの中心街へ。日曜日なので閉まっている店が多く、人通りもまばら。とりあえず食事をしよう。ウィーンでは「グーラシュ」という、ハンガリー風のシチューを楽しみにしていた。パプリカがたっぷり入ったビーフシチュー。シュテファン寺院の裏道にあるレストラン「グーラシュムゼウム」は、メニューも写真付きで安心。名物「フィアカーグーラシュ」をオーダー。ビーフシチューに目玉焼きが乗っていて、クネーデルという小麦粉ダンゴとカニさんソーセージとピクルスが添えてある。味は・・・こってりした見かけの割にコクがない。かといってボルシチのような酸味もない。とにかく素朴というか、パンチに欠けるというか「こう来るか・・・」というお味。お肉はよく煮込まれてたっぷり盛られているけど、んん〜日本の洋食はうまいよなあと思う。でも、うまかろうがまずかろうが初めての味に出会うのは新鮮で楽しい。
シュテファン寺院はウィーンのシンボル。ゴシック様式の外観だが、屋根のモザイク模様などは東欧的。ケルトンナウィーンの中心ー通りはウィーンの銀座みたいなところだが、静かで落ち着いたたたずまい。では、おやつにホテル・ザッハーのトルテ(チョコレートケーキ)を食べよう!ウィーンはお菓子が有名で、ウィーン人は甘いものが大好きだ。確かに、今朝、南駅でお茶を飲んだとき、朝から大きなケーキをバクバクやってる老夫婦がいた。コーヒーには角砂糖をポイポイ。それを見て「私もあまーくて濃厚なウィーンのお菓子を食べるぞ!」とワクワクした。歩いてホテル・ザッハーへ。トルテはここと「デメル」が歴史的に競っているのだが、「デメル」のトルテは東京でも味わえる。ということで、ザッハーに決める。ここは格式あるホテルだが、カフェは観光客で賑わっていて、入りやすい雰囲気。ウェイターの男の子たちも感じがいい。席につくなり「ザッハー・トルテ?」と心得ている。コーヒーはウィーン風に「メランジェ」と頼む。あわだてたミルクで割ったコーヒーである。ホイップした生クリーム入りの日本で言う「ウィンナーコーヒー」は「アインシュペンナー」というそうです(難しいよねドイツ語は)。さてさて、ザッハートルテとメランジェが銀色の盆に乗って運ばれてきた。「お冷や」までついている。お味は・・・むおお、濃厚。厚いチョコレートの層の下にはどっしりとしたチョコスポンジ。舌がダルくなるほど甘いけど、「ケーキとは本来甘くなくてはイカン」と堂々と主張しているみたい。砂糖なしの生クリームとあわせて味わうと深いコクが広がって、やっぱりザッハー・トルテって美味しい・・・。カフェのあちこちでフラッシュがたかれている。なんだ?と振り向くとリンゴほっぺの中年アメリカ人婦人。「サンキュー!」と大声で周りの客に事後承諾をとる。このところカメラ持ってパシャパシャ・・・はアメリカ人が目立つ。日本人の方がTPOをわきまえているようだ。だけど、日本人は「その場にふさわしい行動をすること」を意識しすぎてガチガチになって、楽しめていない人が多いと思う。どこへ行ってもノリノリではしゃいでいるアメリカ人やドイツ人は心底楽しそうで、ほほ笑ましい。しかし、東洋人はそうもいかないのよね・・・。
夜は音楽鑑賞としゃれこもう!ケルトンナー通りのツーリストインフォメーションに日本語版の「月刊ウィーン」というタオペラ座ブロイド版新聞が無料で配布されている。これにウィーンのコンサートのスケジュールが書かれているのでとても便利。オペラ座でやっているオペラは「ジジ」。ジジって・・・たしか『恋の手ほどき』という映画にもなったものだ。ゲー。私は上流階級の娘の恋のさやあてをドタバタと軽薄に描いたこの映画が嫌いだ。ミュージカルだが名曲とは思えない。それなのに'58年のアカデミー賞で9部門オスカーを独占しているのだ。この作品を必要以上に厚遇したのには裏事情があったらしい。ということでオペラはやめ。本当はウィーン・フィル・ハーモニーの公演が聴きたいのだが、当日のチケット確保はまず無理。さあて、どうしようかなー。オペラ座付近にはモーツアルトのコスプレをした兄さんたちがコンサートチケットを売っている。実はこのテのコンサートに楽しい掘り出し物が多いというので、3人に説明を受け、シェーンブルン宮殿内の劇場で行われるモーツアルト&ヨハン・シュトラウスの楽曲をやるコンサートに行くことに決める。クレジット・カードもオッケーだった。うわあ、シェーンブルン宮殿だ!その場でツレアイに国際電話をかけて「わたくし今夜は宮殿で音楽を聴くザマス」と報告する。ひとまず宿に戻ることにする。トラムからウィーンの静かな街並みを眺めながめていると、心が安らいでくる。ウィーンっていい街だ。

シェーンブルン宮殿でのコンサートシェーンブルン宮殿のオランジェリー
宿でコンサートにいくためのおしゃれをする。馬子にも衣装とはまさにこのこと。このエトロのショールの美しさといったら・・・。まるで人間がランクアップしたかのような錯覚に陥るではないの。高級なものってやはり魔法がある。ブランドにハマる女の子の気持ちがよくわかる。シェーンブルン宮殿は市街からちょっとはずれた場所にある。トラムに乗って30分くらい。宮殿がある場所はこれがまた広々としたいい街並。宮殿の見物は明日ゆっくり♪
シェーンブルン宮殿内のオランジェリー(オレンジの温室)をコンサートホールに改造したホールは、豪華ではないが、とてもシック。幕間にシャンパンを飲む場所もシンプルでいい感じ。
このコンサートは、JTBのツアーにも組み込まれているようで、日本人団体客もけっこう目立コンサートつ。皆さんおしゃれをしておすまししている。観客のほとんどが外国人観光客だ。コンサートの結果を言うと、まあまあ。オペラやバレエも組み入れてそこそこ楽しく見せてくれたが、身体が泡立つ・・・という、時々起こる芸術的感動には至らなかった。若いオペラ歌手はちょっと声を張り上げすぎで、バイオリニストたちも「おお、今日の彼女は妙に気合入ってるねえ」と顔を見合わせて苦笑していた。ますますウィーン・フィルが聴きたくなった。でも、大好きなヨハン・シュトラウスのウィンナー・ワルツには酔わされた。ほんとうにウィーンはワルツが似合う、ちょっぴり眠いようなゆったりした街なのだ。
終演は10時を過ぎていた。観客の多くがタクシーに乗り込んでいたが、ケチケチ旅行者の私は電車で。夜遅くに地下鉄とトラムを乗り継いで帰るのはちょっと怖かった。治安の良い国とはいえ、人気は少ないし、やはり夜は不良がいる。なるべく運転手のそばに座るようにして、なんとか帰る。


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