6/13(日)ローテンブルク→ヴェルツブルク
鉄道もいいね。ロマンティック街道いちいち可愛いローテンブルク
紅茶とゼンメルとチーズとハム。そして絶妙な茹で加減の半熟卵で朝食を取る。おいしかった。ヨーロッパバスには乗らないで、列車を2回乗り継いで、一気にフランクフルトまで行こう。
ローテンブルク駅のホームには鳩の巣があり、もうすでにヒナとは言えない大きさの子鳩が甘えた声でピイピイ鳴いている。
列車はたったの2両。小さな駅で最初の乗り継ぎをする。バスと違って面倒くさいと言えば面倒くさいが、それでも私は鉄道の旅の方が好きだ。車内を歩き回れるし、揺れが心地よい。遠回りも寄り道も乗り継ぎも、何だか楽しい。小さな駅の周りには木に囲まれた可愛い家が並んでいる。耳が不自由な両親のもとで育ったクラリネット奏者の女の子の成長を描いた『ビヨンド・サイレンス』というドイツ映画に出てくる優しい家並みにどこか似ている。この町にも冬には雪が積もり、クリスマスには灯りを燈すのかな。ここにも人々のそういう営みがあるんだと思うと、嬉しいような、そして我が家から遠く離れて今夜の宿のこともわからずにいる自分を頼りなく感じたりする。私にも帰る家があり、家族がいながらも、いつもどこか根無し草のような気持ちでいるのは何故だろう。旅をするように、このまま確かな安定を得ることを求めずに、ふらふらと人生を生きるのかもしれないな、案外私は。さもない景色の中で、ふとそんな正直な自分を見つけたりする。
ヴェルツブルク行きの列車で。車掌さんが切符を見に来るついでに話し掛けてくる。乗客は車輌に3人程度だ。「ヴェルツブルクへ?」「はい」「初めてですか?」「はい」「じゃあ、待っててね」急いでその場を去ったと思ったら、日本語のリーフレットを持って来てくれた。はあはあ息を切らしている。急いでくれたのかな。それは、この電車の車窓から眺めることができるロマンチック街道の見所と、ヴェルツブルクの案内が書かれているものだった。ヴェルツブルクはオランダ商館医師として幕末の長崎に赴き、医学を教えたシーボルトの出身地だということを初めて知る。シーボルトは長崎ではトーマス・グラバーと共に今でも親しまれている外国人なので、ヴェルツブルクは、元長崎県民としては縁がある街だ。降りて観光しちゃおう!
車掌さんは、ヴェルツブルクに着くまで、停車するたびに、「ここはヴェルツブルクではないよー」「次の次の駅ですよ」「いよいよ次の駅がヴェルツブルクだよ」といちいち教えに来てくれた。その様子がとても真面目なのが楽しかった。ひとりで旅をしていると、こういう出会いと親切がほんとうに嬉しい。

ヴェルツブルクに泊まろうドイツのお人形は可愛いのだ
ヴェルツブルク到着!ここはロマンティック街道の北の出発点。北上コースを取った私には最後の街。マイン川のほとりに開けた落ち着いたたたずまいの町。紀元前1000年にケルト人が要塞をつくったのがこの町の始まりという。とても歴史の古い町だ。ルネサンス時代には多くの芸術家によって都市文化が花開いたこともあり、見所が多いらしい。マイン川の対岸に高くそびえるマリエンブルク要塞の眺めが、見たことのない景色で素晴らしい。ちょっと小雨だ。まずはレストランでしっかり食事をしようと思う。日曜日なので、商店やレストランの多くが閉まっている。
美術館の近くに、地元の人で賑わっているレストランを発見。英語のメニューはない。ふつうはここでおびえてしまう私だが、旅も終盤に入るとだいぶ図太くなってきているらしく、ま、テキトーに定食を頼めばいいや、と肝を据える。どうやってオーダーしたのか忘れたが、定食を頼んだ。6人掛けのテーブルに一人で通されたが、ほどなくドイツ人カップルが「こんにちは〜」と座ってくる。ああ、そう言えばドイツのレストランは相席が当たり前らしい。そして気持ち良く席を詰めあうのがドイツ人なんだって・・・と思いながらパスタの入ったミネストローネが運ばれる。さ、いただきまーす。と、スプーンを持ったらなんと相席のカップルが笑顔で「めしあがれ」みたいなことを言った(フランス語の「ボナペティ」に似ていた)。ちょっとびっくりして「ダ・ダンケ」と言う。こんどはいかにもドイツ人のおばちゃん風の巨体の、でもとても人柄が温かそうなご婦人が2人、小さな子供を連れてニコニコと微笑みながら「おじゃましますネ」と言って座る。やがてカップルの皿が来た。するとおばちゃんたちと子供が声を揃えて「めしあがれ〜」カップルは「ダンケ」と。そして私のメインの皿が来たら、今度はテーブルの全員、5人の声が「めしあがれ〜」。これは嬉しかった!まるで誰かのお宅にお呼ばれして食事をしているような温かい気持ちになってしまった。ドイツのレストランは相席が普通。というのはガイドブックに書かれているが、他人のお皿が来たら「めしあがれ」と声を掛け合う素敵な習慣があるとは・・・・。たっぷりのチキンのクリームソース煮に付け合わせはパイのシチュー詰め。おなかも心もいっぱいになった。私も今度ドイツのレストランに行ったら言うんだ「めしあがれ!」。

遠いタヒチ ペンション・シーガル
さて、フランクフルトに移動しようかな・・・・と歩いていたら、路地にペンション・シーガルを見つける。ああ、『地球の歩き方』に載っている宿だ。「ちょっと出かけます。すぐに戻ります」という札がかかっている。ここって、ヴェルツブルクでは安い宿なんだっけ・・・と思いながら札を眺めていたら、背後に「ご用ですか?」と男性の声がかかる。ジャン・レノが老けて大人しくなったような雰囲気のシーガルのご主人。優しそうだなと思い、思わず「はい。お部屋ありますか?」と言ってしまう。「ツインの部屋をひとりで使ってもいいよ。朝食も食べますね?」と通された部屋はこの旅初の角部屋で広い窓が2つ。そして何たって広くて清潔でベッドカバーやインテリアもいい感じ。「気に入りましたか?」「はい、とても!」そしてご主人は笑顔で「こっちのベッドもどうぞ、使っていいですよ」ポンポンとベッドをたたき、ふかふかさせてみせる。昨夜は半地下の暗い部屋に通され、「使うなよ」とばかりにさっさともう一つのベッドのシーツを剥ぎ取られた私には夢の様な対応だ。ご主人は英語も堪能で親切で知的。お金儲けよりも人とのつながりや趣味を大切にする人だろう(勝手に推測←さほど外れていないだろう)。階段の壁一面にゴーギャン風の絵がペイントされている。帆船のミニチュアも飾られ、このご主人は海が大好きなんだろう。「だいたいさ、南方志向の人はいい人が多いんだよね〜」と嬉しくてベッドでゴロゴロ転がる私。タヒチ風の絵を思い出して「バリハ〜〜〜イ♪」とミュージカル映画『南太平洋』の歌をメタクソに歌う。とてもくつろいだ気分になり、雨上がりの町を散歩する。この町がとても好きになっていた。

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