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| ●パリの夜明けは早く、日没は遅いが 7時間の時差のために夜明け前から目が醒め、夜明けを待つ。 窓の外からパリの下町の暮らしを眺める。 洗濯物を干す老女、窓の外をずうっと眺めている猫。 パリではカーテンの代わりに日本の「すだれ」が流行っているみたいだった。(写真は部屋の窓からの景色) 3年前に来たときも、雑誌に「FUTON(布団)」特集があったっけ。 身支度をととのえて、宿の地下の食堂で朝食を取る。ショコラとパリパリのクロワッサン、バゲット。やっぱりフランスのパンは美味しい。 |
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| ●ヤギのチーズに泣く、食のチャレンジャー 今夜はフランスとスペインの国境の街、IRUNまでTGV(新幹線) に乗って5時間半、そこで夜行列車SUD EXPRESSに乗り換えて 簡易寝台(クシェット)で夜を過ごして13時間半後にリスボン着の予定。 南方面の国際列車はモンパルナス駅から出るので、モンパルナス駅の コインロッカーに荷物を預けて、出発の時間4時ごろまでパリを歩こう。 パリには何度か訪れた相棒、サンジェルマン・デ・プレ近くのBUCHという 下町が活気があって好きだとかで、そこに案内してもらうことに。 モンパルナスからサン・ジェルマン・デ・プレまで歩く途中に露天市場が。 果物や野菜を見るだけでも楽しい。中には「キノコ専門店」などもある。 ところでマドモアゼル、カバン開いてまっせ→ チーズ好きの相棒が、ヤギのチーズを購入。小心者の私は遠慮する。 しかしそれが凄まじい臭みで、いつまでも鼻から臭みが抜けないと大騒ぎ。 味を表現してもらうと「ヤギの大群が次々に口の中にゲロを吐いている」 |
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| ●迷ったあげく、変わっていた街に着く BUCH」に行くはずが、なかなか行き当たらない。どうも、「BUCH」(ブチ)ではなく「BAC」(バク?)を徘徊していた我々だった。ブチだのバクだの、なんかマヌケ。 BUCHは、相棒が滞在していた時(だいぶ昔だが)より、ツーリスティックな街になってしまったそうで、がっかりだとか。焼き立てのパンを次々にお客に放り投げて、まさに「飛ぶように売れる」美味しいパン屋さんがあったそうだが、それもなくなったそうで、残念そう。 |
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| ●「星の王子様」は今もフランスで一番愛されている それでもBUCHは、最先端アートを取り扱う画廊が多く、なかなか楽しい。 「星の王子様」の専門店発見。私も子供時代に感動した1冊。 初めてパリを訪れた1999年冬は、サン・テグジュペリ生誕100年の年で 記念に「星の王子様」の腕時計を買ったのだが、半年で壊れたっけ。 1万円する品物だったのになあ。 ちょうどパリでは「星の王子様」のミュージカルが開催されるため、 街中やパリの「ぴあ」のような情報誌「パリスコープ」の表紙などで大宣伝。 「スペクタクル・ミュージカル」とのうたい文句に、「スペクタクルと来たか〜」 と思いながらも、ミョーに観てみたいとは思った。 |
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| ウィンドウを眺めたりしながら、ぶらぶら過ごす。 昼食は、歩きながらクロック・ムッシュ (ベシャメルソースとたっぷりチーズとハム入りのホットサンド) を食べたり、市場のお惣菜屋で買ったトマトの肉詰めを サンジェルマン教会のベンチで学生らに混じって食べる。 我々、トマトの汁をボタボタさせながら手づかみで喰らう。 サン・ジェルマン・デ・プレには老舗カフェ 「フロール」と「ドゥ・マゴ」が。 「ドゥ・マゴ」は東京は渋谷のBUNKAMURAに支店があり、 2001年夏、レストランガイドブック「ザ・グルメ」(エクスメディア刊) で取材したことを思い出す。ショコラが抜群に美味しいの。 「どっちも、ヨーロッパのオノボリさんばっかりじゃのう!」 |
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| ●あの、タバコ好きのフランス人までもが・・・・ ヨーロッパ旅行のおとも、グラム売りのグミを買ってTGVに乗り込む。 入れ歯型のグミも買ってしまった。キバがプリティ。 ペリエとサンドイッチも買う。5時間半ほどでスペイン国境の町IRUN。 しかし、TGV、禁煙車両がほとんど。TGVだけでなく、 パリの人全体的にタバコを吸わなくなったことを改めて感じる。 私らですか、愛煙派です。薬害だの、世の中にはタバコなんかより もっと危険なことがたくさんあって、タバコなどは大した問題ではない。 と、私の好きなアメリカの作家ポール・オースターが言ってる! まあ、出費がかさむから、なるべく節煙するつもりではいる。 |
◆この旅最大のピンチ「TOLOSA物語」◆ 夜10時過ぎ。IRUNに到着。わたわたと降りる私たち一行。乗り換えの時間まで30分ほど、駅前のバールでサンドイッチなどを買う。 寝台列車「SUD EXPRESS」は何番線に入るのかを確かめようと駅に戻るが、何もかかれていなかった。おかしいな、と思って駅員に尋ねたら、 「あら、ここはフランス国鉄の駅のIRUNで、SUDはスペイン国鉄の駅から出るんです。タクシーで移動した方がいいわよ」と言われる。 何だって〜〜〜〜!?!?乗り換え駅を降り間違えたのか、我々は!!でも、そんなIRUN駅がふたつあって、という情報は何もなかったぞ。 背後で「あー、でも間に合わないかも・・・」とマダム駅員が腕時計を見ながら、つぶやいているのを感じながら、 真っ青になった我々。道路に仁王立ちになり、タクシーを体当たり状態で止める。運転手はフランス語オンリーだったが、 切符を見せて「シルブプレ!シルブプレ〜!」と叫ぶ我々に全てを察して、凄まじいスピードで走り出すフレンチタクシー。 15分ほどでスペイン国鉄駅に到着。しかし、SUD EXPRESSは数分前に出発してしまっていた。 やってしまった・・・・・。 あとで察するに、タクシーの運転手が「次の駅の、サン・セバスチャンまで飛ばしてやろか、そこでならSUD EXPRESSに追いつけるぞ」 と言ってくれていたらしいが、そのときは、ショックのあまりよくわからず「とりあえず、降りる」と。 仕方ないから、今夜はこのへんでテキトーに泊まって、明日のSUD EXPRESSに乗ろう、と決める。 しかし、このあたりはHOTELがありそうにもない、真っ暗な町。 今回、スペインに行く予定はまったくなかったため、スペインの情報はゼロ。 しかし、相棒は、過去に取材でスペイン北部を廻った経験があり、 「じゃ、次の町のサン・セバスチャンに行って泊まろかー。大きな海辺のリゾートよ〜」と頼もしい。 焦ってもいない。むしろ楽しんでいるぐらいの余裕だ。 一人旅じゃないってなんてステキ・・・・。鈍行の在来線に乗り込む。 サン・セバ、だいたい10何キロ先だから、渋谷から川崎の距離だね、とトーマスクック時刻表を見ながら話しつつ、 地元の人たちに混じって在来線の旅。 途中、我々の乗車券を見にきた車掌さんにも「サン・セバスチャン?(に行くのか)」と聞かれて、ウンウンと首をたてにふる。 数十分の時間が流れる。 「ねーねー、サン・セバスチャンって駅まだかなー。渋谷から川崎の距離どころか、横浜もとうに過ぎてる時間だよ」 「駅の名前、ちゃんと見てたよなあ」 「見てた見てた。サン・セバスチャンなんてなかった」 「なかったよなあ。誰かに聞くかぁ」 フランスとは違い、スペイン人は英語が通じないことが多い。しかし、相棒は若い男性の集団に入っていき、 ゼスチャーで「今どこを走っているのか」と車内の路線図を指差しながら聞いている。「サン・セバスチャンに行きたいんやけど」と。 「あのなあ、どうも乗り過ごしたらしいねん」 「マジで!!??」 つまり、サン・セバスチャンというのは町の通称で、本来は違う名前の駅名らしい。何だとぅ!?トーマス・クック時刻表にも「サン・セバスチャン」て 書かれているではないの。「ま、あれやな、サン・セバスチャンてのは聖書に出てくる裏切り者の名前やから、あまり公にしたくない通称なのかもなあ」 と相棒。しかし、この電車は終電らしい。サン・セバスチャンに折り返す電車もない。 深夜近くに東洋人旅行者2名が、地元の電車に乗っているのも珍しく、チラチラと見られていた我々への視線、好奇心から一気に憐憫に変わる。 車内の空気がピーンと緊張する。気の毒に、あのひとたち・・・・。どうするんだろ。そんな空気で満ちる。相棒はアハアハ笑っている。 駅をいくつか通過するが、ホテルなんかいっこもなさそうにない、無人駅が続く、超田舎路線である。 「んじゃ、どっかの駅のホームで野宿しよかー」 「ウン、ぜんぜん平気だけど、駅が寝かせてくれるかねえ」 「それもあるなあ」 ま、何とかなるわ。独りじゃないってステキ。車内の路線図を見ていた相棒がふと言う。 「あのな、この電車の終点までの間に、TOLOSAって町があるけど、これ、もしかしたら大きい町かもしれんで。ダメモトで行ってみっか」 我々の会話を眺めていた、ひとりの若い女性が声をかける。英語だ。 「あのう、もうこの電車は終電で、サン・セバスチャンに折り返すこともできないの。この先のTOLOSAという町だったら、駅の近くにホテルがあるわよ」と。 そのことは、我々のサバイバル魂で解決に向かっていることだったが、改めて他人に確認してもらえたことと、 何よりも心配して声をかけてくれた優しさが嬉しかった。 黒髪で大きな瞳のお嬢さんは、TOLOSAに住む女の子。一緒にTOLOSAで降りるが、やはり田舎町である。 暗い道を、ホテルのネオンが見えるところまで案内してくれる。 ああ、やっぱり自分たちだけでは、ここまで歩いて見つけることはできなかった、きっと・・・と思うと その女の子の親切が身にしみる。世の中捨てたもんじゃない。どうかこの親切な女の子が幸せになれますように。 その間「サン・セバスチャンに行こうとしてたの?あそこは素敵。ロマンチックな町よ」と、あれこれ話してくれる。 お礼を言って別れるが、名前ぐらい聞けばよかった。 ホテル「ORIA」。もう深夜であるが、「部屋ありますか」との我々に気持ちよく対応してくれる。 どうやら部屋は満室だが、別館は空いているとのこと。道を隔てた近場だ。 その別館は、黄色い壁の、素敵な一軒屋風の建物で、入り口から自分たちで鍵で入る。ほかに客はいないようす。 「こ、こりゃあ思いがけずロマンチックホテルに・・・・・」 部屋もきれいで可愛くて、バスタブにお湯を張ってゆるゆると身体を伸ばすと、幸福感がいっぱいに広がる。 「優しい女の子だったねえ」 などと話しながら、ひとまずピンチをくぐりぬけたことを喜び、持っていた小さなワインを飲んで眠る。 |