第1章:自由ヶ丘編



 アミエルは言いました。
「将来を思い煩うな。現在為すべきことを為せ」、と。
ならば私は逃げたいです、アミエルさん。

 ウェルギリウスは言いました。
「時は万物を運び去る。心までも」、と。
 心はいいから彼を連れ去って、ウェルギリウスさん。

 エマソンは言いました。
「その日その日が一年中の最善の日である」、と。
 絶対にそれは違います、エマソンさん。

 プレヴォは言いました。
「時はその使い方によって金にも鉛にもなる」、と。
 今しばらくは鉛です、プレヴォさん。

 ボヴィーは言いました。
「全てが失われようとも、まだ未来が残ってる」、と。
 未来まで失いそうです、ボヴィーさん。



 ・・・・・・などと、どれだけ時の無常を想っても、その日
というのはいつか来るものでして。ついにONEさんと初の御
対面の日がやってきた。

 結局一切連絡が取れなかったので、予定時刻どおりに所定の
場所に行くことにした。完全な普段着で、だ。初顔合わせで学
校帰りのカッコをしていくのは結構気が引けるが、まぁ時間の
都合ということで我慢していただこう。お土産も持ったし。そ
もそもホントに来るかどうかも、微妙と言えば微妙だし。とか
言う以前に、相手ONEさんだし。

 待ち合わせの駅に到着。ホームをざっと見渡すも、それらし
い姿は一向に見えない。電話の声を聞いた段階では、


『細身で頼りなさ気でありながらも、
 一癖ありそうな人物』



を想像していたのだが、予想が外れたかもしれない。

 埒が明かないので、電話する。どうやら向こうも待っていた
らしく、今回は割と素直に出た。

C:「もしもし」
O:「もしもし。もう着いた?」
C:「はい。駅構内に」
O:「私は外。交番の前にいるよ」

なぜ交番。

C:「・・・では、そちらに向かいます」
O:「はい」

 チェスセンターには電車で行くため、駅構内に居て欲しかっ
たんだけど・・・。連絡が取れないとこういう弊害が起こるか
ら、注意して欲しいですね、全く!それともこのまま徒歩で何
処かに行くのかな?

 まぁ考えても仕方がない。会って話せば分かることだ。今に
も回れ右してしまいそうな気持ちを必死で抑え、外に出て最寄
の交番に向かう。
 ・・・想像とは違うものの、それらしい人を発見。どう声を
かければいいのか迷ったので、とりあえず意味の無い愛想笑い
を浮かべながら近づいてみる。実に日本人的である。


C:「あ、どもども」
O:「どーも、こんにちはー」
C:「こんにちは。・・・ONEさんですか?(一応確認)」
O:「はい、そうです」


 ・・・やはり本人らしい。生ONEさんだ。あのONEさん
を、私は目の当たりにしているのだ!!一見普通で人当たりの
良さそうな印象は受けるものの、チャットや電話からも通じて
くるこの『一癖ありそうな雰囲気』は、正しくONEさんの証
。ONEさんの中のONEさんである。
 ちなみに向こうは向こうで、私が茶髪にハナピだったらどう
しようとか思っていたらしい。一体今までどういう目で見てい
たんだ・・・・・・。

 で、そんなONEさんを引き連れてチェスセンターに行くこ
とになった。駅にUターンし、持ってきたお土産を交換しつつ
電車を待つ。
 ONEさんのお土産は、知る人ぞ知る『カツゲン』だった。
『カツゲン』は北海道限定(らしい)の乳酸飲料で、『これを
マズイと言う者は道民ではない』と言われるほどの珠玉の一品
である。受け取ったブツは、外見が牛乳パック、あまりやる気
のなさそうなデザインだった。メーカーを調べると雪印。納得
である。

 丁重にカバンの中にしまい(後でこっそり捨てようとか考え
ていたわけではない)、電車を待つ。待つ事数分、電車がやっ
てきた。こうして二人の雪一族は、チェスセンターを目指し意
気揚々と旅立って行った。何の目的も、無く。





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