6/4(金)ミラノ→ヴェネツィア
ふたたび一人旅へ
昨夜はヤマちゃんとおにぎりを食べて、ヤマちゃんが撮影したビデオを鑑賞する。ビデオカメラはいいなあ、景色が見たままに映るだけでなく、街を行き交う車や人々のおしゃべりの声、風の音まで収めてくれるのだ。私も絶対買うぞ。ヤマちゃんは高い場所から街を見下ろすのが好きらしい。「ナントカは高いところに登るって言うからさ」だって。
ミラノ最後の夜は、ものすごく熟睡したらしく、朝目覚めた時「ここはどこだろう?」とぼんやりとした不安におそわれる。やがて「ああ、イタリアにいるんだ」とゆっくりと気付く。旅行者がときどきおちいいる不思議な朝だった。
ホテルをチェックアウトしてミラノ中央駅へ。いよいよヤマちゃんとお別れ。「ぱんにゃと旅ができて、本当に楽しかったよ」と言うヤマちゃん。ヤマちゃんは体調が悪い時でもグチ一つ言わず明るく振る舞い、私をいつも助けてくれた。それなのに私は何だかんだと文句をたれてばかりだし、そのくせいつもヤマちゃんに頼るばかりだった。いつかまた一緒に旅をする時がきたら、もっと気持ちのいいパートナーになるね。ごめんね、ありがとうね。
ヤマちゃんはスイス行きの列車に乗った。どうしても見たい壁画があるらしい。そのあとフィンランドの北極圏の街に住む友達の家に行き、トルコにも行くと言う。いい旅を、ほんとうにいい旅を!私もこれからは一人旅だ。背筋を伸ばし、「よしッ!」と勢いをつけて歩く。
輝く水の都ヴェネツィア
11:05の列車でヴェネツィアへ向かう。車内で新婚旅行中の日本人カップルに出会い、おしゃべりをする。奥さんは演劇をやる方で、秋に『ロミオとジュリエット』の一人芝居をするということで、ベローナ観光に行くところ。旦那さんは優しそうな普通のサラリーマン。「経済的にも社会的にも安定した暮らしだけど、こんな人生つまんない・・・って思いますよ」と本音を言う。わかる。旅行という非日常にいると、日本での自分の生活を客観的に振り返ってしまうんだよね。でも、人間って社会的な生き物だと思う。仕事があるっていい ことだと思うな。どんな仕事であっても一生懸命やると面白いものだ、ってみんな言うよ。・・・なんて甘っちょろいことは言いませんです。奥さんのお芝居に行くことを約束し、名刺交換をする。
ガタンゴトンと列車に揺られ、車窓の景色を眺めながら、今夜は泊まらずに夜行でウィーンに入ろうかなあ、イタリアに長く居すぎちゃったな・・・とぼんやり考える。やがて車窓は両側がいちめんの海。すばらしい絶景の中をまっすぐ走る。ヴェネツィア・サンタ・ルチア駅に到着するやいなや、そこは輝く水の街!もう絶対にヴェネツィアに泊まっていく!と決め込む。ホテル探し・・・駅周辺に安宿が多い。と言っても狭い島で土地が限られているうえ、1年中観光客が絶えないヴェネツィアのホテル料金はイタリア一高い。『歩き方』推薦の安宿をあたるがどこもfull。困ったな・・・。で、初めて駅のインフォメーションに入り、ホテルを紹介してもらうことに。「ドゥ・ユー・ノウ・チープ・ホテル?」と笑顔 で話し掛ける。インフォメーションの人はたいてい流暢で判りやすい英語を話してくれる。で、72000リラのホテルを予約してもらう。んー。5000円程度?ヴェネツィアでは安い方だ。「ホテル・ミネルバ」は駅から近い。古いが、グラナダのオスタル・ゴメス(アンモニア靴の宿)よりは少しマシといったところ。まあ、ヨシとしましょう!
ヴェネツィアでの交通手段はすべて船!自動車は1台も走っていません。パトカーも救急車も船なんです。ゴンドラに乗るのも素敵だけど、一人で乗ってセレナーデ聴くのはアホらしいので、ヴァポレット(水上バス。上の写真)の一日乗車券を買って、乗り回そう!その前にゴハンゴハン。イタリアの観光地はたいてい「ツーリスト・メニュー」なるお手軽料金の定食があるので、雰囲気のいいレストランに入る。観光地だもんね。昼食を一人で食べるのも別にへっちゃらだもんね。トマトソースのスパゲティとミラノ風カツレツ、サラダとしっかり食べる。朝は軽く、昼はしっかり食べて、夜も軽く済ます、というのが一人旅の気楽な食事パターンかも知れない。水上バスに乗る。ラッキーなことに一番前の席をキープ。船から水の都を眺めることができる絶好の乗り物。アドリア海の女王、水の都ヴェネツィア・・・なんて素敵な街なんだろう。古い街並みと、みなもにキラキラ輝く陽の光。
『ベニスに死す』の舞台 リド島へ
ヴァポレットに乗って、リド島へ行く。ルキノ・ヴィスコンティの名画『ベニスに死す』の舞台。ビョルン・アンドレセンが演じた、映画史上に残るギリシャ彫刻のような美少年が立ったあの静かな海岸に行きたくて。ビーチに続く通りは洒落た店がぽつりぽつりと並ぶ。通りに面するカフェではアンドレセンばりの可愛い金髪の少年がジェラートが溶けているのもおかまいなしに、『ドラゴン・ボール』を読みふけっている。
リドは国際的なリゾート地で、カジノ、レストラン、劇場などがある。とても洗練された雰囲気で、これぞヨーロピアン・リゾートという感じ。ニースもいいけど、このシックな雰囲気がとても気に入り、印象に残る。
海岸の小高い丘には、瀟洒なホテルがぽつりぽつり、しんと建っていて、目の前がプライベート・ビーチになっている。バンガロー風の着替え小屋が並んでいるあたりも、『ベニスに死す』そのままで、伝統を感じる。ビーチ・リゾートはいいなあ。最近は東南アジアの各地に香港のアマン・グループ系などのラグジュアリー・リゾートが増えてきて魅力だけど、リド島のような伝統の重みを感じるヨーロピアン・リゾートの世界も奥が深くて憧れる。リド島のリゾートに気後れしないような、キャリアと教養を積みたいものだ。こうして私の勤労意欲は増すのかも知れない。なんちて。海岸の波打ち際でピンク・紫・黄色・オレンジ色の貝殻を拾いながら歩く。潮風にふかれ、波の音を聞いていると、心が洗われて軽くなっていくみたい。
ロマンチックな夜のヴェネツィア
ふたたび水上バスに乗って、とりあえずサンタ・ルチア駅に戻る。水上バスに揺られながら、ここは本当に美しい所だなあ、こんな街ちょっとほかにはないよね・・・。とうっとりする。イタリアらしく街並みは洗練されているし。小さな運河のひとつひとつが味わいがある。そこにはしっかり人びとの暮らしもある。水に囲まれた不思議な暮らしが。世界はほんとうに広いのね。
旅行中は、なるべく明るいうちにホテルに戻る事にしている。ホテルミネルバの狭い部屋のベッドに寝転んでいると、隣のレストランから楽しそうな笑い声と食器やグラスを交わす音が聞こえる。このまま眠るのはもったいないなあ。ヴェネツィアは比較的治安がいいという評判だし、夜の水上バスからの眺めも素敵だろうな・・・。出掛けちゃおう!
夜のヴェネツィアは、ほんとうに美しかった。街の灯りがみなもにゆらゆら揺れて、ゴンドラがセ レナーデを奏でながらゆっくり行き交う。なんて素敵な夜なんだろう。一人で旅をしている幸せをかみしめながら、でも何だか恋をしているような満ち足りた気分になるのでした。ここに来た恋人たちは生涯いっしょにいられるような、そんな素直な気持ちになれそうな幸せな夜の景色なのでした。
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